2014年4月7日月曜日

西野 努コラム 「便所スリッパ 」

[2011年6月号 FORCEより]

以前、浦和レッズのハートフルクラブでキャプテンを務める落合弘さんのお話を伺う機会があった。落合氏自身は長年日本代表で活躍され、日本リーグで得点王にもなられた方であるが、1960年代に日本代表強化の為にドイツから派遣されてきたデッドマール・クラマーさんから指導を受けた時の話は興味深かったので紹介させてもらう。

日本へ来て、日本代表チームを指導することになるのだが、選手に実践させたのは、繰り返しの“基本練習”だったそうだ。いくら国際的には弱いといえ、日本を代表する選手達にさせた練習が、キック・トラップ・ヘディングといった基本ばかりで、しかも相当に長い時間単調な練習を繰り返させたのだ。世界のトップを目指すのであれば、様々なテクニックやスキルのベースとなる基本技術が何よりも大切だと言うことを練習をもって選手達に知らせたのではないかと思う。

そして、もう一つ興味深かったのが、このクラマーコーチが日本代表選手達に、「便所スリッパは使った後はしっかりとそろえなさい」と指導したという話だ。“一流のサッカー選手になるためには、一流の人間にならなければならない。そのためには、次への準備、次に使う人の為の準備という心がけが常になければならない。そうした準備と心がけが自分のプレーにもつながるし、チームプレーにもつながる”というメッセージだったそうだ。

最近、森信三氏が書いた「修身教授録」という本を読んだ。私が卒業した神戸大学でも教鞭をとられた20世紀の哲学者であり教育学者であった人だが、曰く「学校へ行き、その子ども達がどのように教育されているかを知るには、靴箱の靴(上履き)のかかとのそろい具合を見るだけでわかる」という。
クラマーコーチと森信三氏の言うことが偶然の一致だとは思わなかった。人間としての基礎力(人間力)をつけておかないと、どんな世界でも一流にはなれないし、逆に言えば、そのベースさえあれば、何でもできる。

今、サッカースクールでは、パーソナルテーマとして「整理整頓しよう」と掲げています。サッカーの道具だけでなく、日々の生活から心がけて実践してみませんか?
いろいろな変化が感じられるようになります。

【このコラムは2011年5月〜2014年3月 埼玉スタジアムサッカースクール会員向けに発行していた月刊情報誌FORCEに掲載されたものです。】

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