2014年4月7日月曜日

西野 努 コラム「自分を持つことと人の話を聞くこと」

[2012年2月号 FORCEより]

先日、湘南ベルマーレの新監督に就任された曺貴裁(チョウ・キジェ)監督と話す機会があった。新しい仕事に対して胸膨らませている様子でいろいろな話をさせてもらったが、少し驚くような話もあった。「トップで契約した若手選手に、なんか話してくれへんか。プロとしての心構え的なことを、、、」とのこと。チョウさん曰く、どうもここ最近のプロ選手の中には自分の信念とかやりたいプレーとかを表現できないだけではなく、そういったものが選手から感じられないことがあるという。そのあたりは非常に物足りないらしい。言われたことをやるだけの選手では戦っていけない。

一方で、私がプロ選手だったころは、グランド上で自分という軸を持っていない選手はどんどんと排斥されていった。言葉を変えると、グランド上で自分を表現できない選手はいくら技術があって、フィジカルが強くても生き残ってはいけなかったということだ。我の強い選手が、グランド上でも優位に立ち、活躍していた。

〜強い個性と協調性〜

ただし、強い個性があるだけでも十分ではない。
わがままと個性の違いは、他人や周りのことを考えるか考えないかではないかと思う。わがままなプレーをする選手はチームに貢献することができないが、個性を発揮できる選手はチームの勝利に貢献できる。この違いは大きい。太い軸(強い信念と個性)を持ち、かつ周りともコミュニケーションができ、全体的なことも考えられるような選手が増えてほしいと思う。 やはり、バランスだ。

〜スイッチが入る瞬間〜

以前、大宮アルディージャの育成コーチと話す機会があり、育成年代の選手達に“スイッチが入る瞬間”があると言うことを聞いた。それまではコーチが何を言っても右から左へ抜けていた選手が、あるとき突然何かのきっかけでコーチの指導を聞いて理解する姿勢を持ち始め、大きく成長のスピードが変わったということだった。やはり、周りとのコミュニケーションは必要不可欠なのだと改めて思った。

〜土台としての基礎〜

小学生年代でもすでに個性を持ち表現できる選手、できない選手、周りが見えている選手、見えてない選手といろいろだが、いずれにせよ基礎が身についているかどうかがその上に築くパフォーマンスの可能性を大きく左右する。しっかりとした基礎(心・技・体)を小学生年代に培っておけば、それを土台にいろいろなモノを積み重ね表現していけるようになるが、逆に土台となる基礎が疎かでは、積み重ねを期待することはできない。
心・技・体の基礎を築くためには繰り返し・時間・習慣が重要となる。技(基本技術)の習得は何度も、単調でつまらないかもしれないがシンプルなトレーニングを積み重ねなければならないし、体の基礎はそれこそ日々の積み重ねがあってのものだ。そして心の基礎は、日々の習慣に根ざしている。

冬、葉を散らしている木々は根っこをしっかりと張り巡らして水分を吸い上げて、来る春に備えているという。
小学生年代のうちにしっかりと基礎を身につけ、その上で強い個性を築き上げて表現できる選手になってほしい。

【このコラムは2011年5月〜2014年3月まで埼玉スタジアムサッカースクール会員向けに発行していた月刊情報誌FORCEに掲載されたものです。】

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