2014年4月7日月曜日

西野 努 コラム「 答えのない世の中で!」

[2011年10月号 FORCEより]

<世の中科>

昨年より、Jリーグが各Jクラブのジュニアユース選手(中学生)を対象としたキャリア教育を実施している。キャリアデザインサポートプログラムという名前で、元々は杉並区の公立中学校で始まった“世の中科”という試みをJリーグ版として日本のプロサッカー界を題材に実施し始めた。身近にある世の中の仕組みを、地域の大人や企業の人々も巻き込んで子ども達に学んでもらうという画期的な試みだ。いろいろな特徴があるが、その運営方法がおもしろい。学校のように先生が生徒へ教える・伝えるということではなく、テーマや方法を提供し、子ども達が議論をしたり、シミュレーションしたりしながらテーマについての理解を深めると同時にコミュニケーションスキルも身につけていくことができる。指導役は先生ではなく、ファシリテーター(世話人)と呼ばれる。

<正解ではなく、納得解>

今の世の中は、答えのない時代だと言える。
一昔前であれば、がんばって高校・大学へ入り、企業へ就職すれば、安定した人生を送れるという安心感があった。そのために、子どもは塾へ行き、一生懸命勉強し、少しでもよい高校・大学へ入る努力をした。
しかし、今のように価値観も多様化し、先が見えない世の中では、学歴や一流企業への就職と充実した幸せな人生がイコールで結べなくなっている。言い換えれば、人生においても、日々の生活においても、学校生活においても、“こうすれば、こうなる”的な画一的な“解”がなくなっている。
世の中科では、こうした世の中・世界で生き抜いていくために、“納得解”と“情報編集力”を重視している。
いわゆる“正解”とは、一つしかないが、“納得解”というのは、正解がなく、いくつも可能性があるなかで、自分が納得して“これだ”、“この方法だ”、“こうすべきだ”ときめたことを自分自身だけの“解”とする。そして、他から何をどういわれようと、信じた道を進む勇気を持つ。
いままでは、“情報処理能力”というものが重要だといわれていたが、今のように情報が氾濫し、簡単にいつでもどこでも情報を手にすることができる環境では、その処理よりも、あふれるほどの情報からいかに自分に必要な情報を選び出し、その情報を組み合わせたり重ねたり(編集)しながら自分の人生で活かしていくかという“情報編集力”が問われるという。

日本全国にこの世の中科は広がっているが、是非とも子ども達にはこのプログラムを経験してみてほしいと思う。

<サッカーにおける納得解>

ある意味では、サッカーというスポーツは、現在の世の中を生き抜いていく上では様々な経験や能力をもたらしてくれる。ピッチ上では、正解・不正解はなく、チームメイトとコミュニケーションしながら、様々な形でもたらされる勝利を目指す。プレーしながら、一つでも多くの“納得解”をもつ選手が活躍できる。情報を処理するだけでなく、状況を判断し、次のプレーへつなげていく。非常に高度な情報編集プロセスがプレー中の選手のなかでは行われていると言える。
サッカーでのがんばりは、人間力のアップにつながり、必ず大きくなってからの人生の節目節目で役に立つということを、自信をもって伝えていきたい。

【このコラムは2011年5月〜埼玉スタジアムサッカースクール会員向けに発行していた月刊情報誌FORCEに掲載されたものです。】

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